やまもと皮膚科・漢方クリニック
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役立つ知識

役立つ知識

アトピー性皮膚炎について③ 〜専門的な治療と対策〜

治療の目標

アトピー性皮膚炎の治療目標は、病気を「完治」させることではなく、「症状がないか、あっても軽い状態を維持し、快適な日常生活を送ること」です。 スキンケア(②参照)と並行して、炎症を抑える「薬物療法」を行います。

薬物療法:炎症とかゆみを抑える

炎症の強さや場所、年齢に応じて、様々な薬を使い分けます。

塗り薬(外用薬)
• ステロイド外用薬:
炎症を抑える最も基本的で効果的な薬です。
強さにランク(最強~最弱)があり、医師が年齢、部位(顔は弱め、体は強めなど)、炎症の程度に応じて使い分けます。
怖がって塗る量が少なすぎると、かえって炎症が長引いてしまいます。医師の指示通り、必要な量をしっかり塗ることが大切です。

• タクロリムス軟膏(プロトピック®)など(外用カルシニューリン阻害薬):
ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える薬です。
皮膚が薄くなる副作用がないため、顔や首など、デリケートな部分の治療や、良い状態を維持するために使われます。

• その他の新しい塗り薬:
PDE4阻害薬(ジファミラスト軟膏)
JAK(ジャック)阻害薬(デルゴシチニブ軟膏)
AhR調整薬(タピナロフクリーム)
これらはステロイドとは異なる新しいタイプの薬で、炎症やかゆみを抑えます。

治療のコツ:「プロアクティブ療法」

アトピー性皮膚炎は、見た目がきれいになっても、皮膚の下に炎症の「火種」が残っていることがあります。

• プロアクティブ療法とは:
湿疹が良くなった(寛解した)後も、保湿剤は毎日続けながら、週に2~3回など間隔をあけて、湿疹がよく出ていた場所に塗り薬(ステロイドやタクロリムス軟膏など)を塗り続ける治療法です。
この「火種」を抑えることで、再発(フレア)を防ぎ、良い状態を長く保つことを目指します。

中等症~重症の場合の治療法

塗り薬だけではコントロールが難しい場合、以下の治療法を組み合わせます。

飲み薬(内服薬)
• 抗ヒスタミン薬:かゆみを和げる補助として使います。
• 免疫抑制剤(シクロスポリンなど):
重症の患者さんに使用し、強い炎症を抑えます。

• JAK阻害薬(飲み薬):
炎症やかゆみの信号を体の内側からブロックする新しいタイプの薬です。
効果が早く現れやすいのが特徴です。(例:バリシチニブ、ウパダシチニブなど)

• 漢方薬:
標準的な治療でなかなか良くならない(難治な)場合、体質や症状に合わせて、炎症やかゆみを抑えたり、皮膚の状態を改善したりする目的で、当院では補助的に漢方薬を用いることもあります。

• ステロイド内服:
急激な悪化時に短期間だけ使うことがありますが、リバウンド(急な悪化)のリスクがあるため、通常は避けます。

注射薬(生物学的製剤)
• アトピー性皮膚炎の炎症の中心となる物質(IL-4, IL-13, IL-31など)の働きをピンポイントで抑える薬です。
• かゆみや湿疹に対して高い効果が期待でき、自宅での自己注射も可能です。(例:デュピルマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブなど)

光線療法(紫外線療法)
• 特定の波長の紫外線(ナローバンドUVBなど)を皮膚に当てる治療法です。
• 免疫の働きを調節し、炎症やかゆみを抑えます。
• 週に数回、病院に通う必要があります。

つらい「かゆみ」への対処法

• まず炎症を抑える:かゆみの最大の原因は「炎症」です。まずは塗り薬でしっかり炎症を治療しましょう。
• 冷やす:冷たいタオルや保冷剤でかゆい部分を冷やすと、一時的にかゆみが和らぎます。
• 爪を切る:爪を短く切り、丸く整え、かき壊しによる皮膚のダメージを最小限にします。
• 薬の活用:飲み薬(抗ヒスタミン薬、JAK阻害薬、漢方薬など)や注射薬もかゆみを抑えるのに役立ちます。
• 刺激を避ける:汗を放置しない、衣類の素材に気をつけるなど、日常の対策(②参照)もかゆみ対策になります。

アトピー性皮膚炎は、適切な治療とセルフケアを根気強く続けることで、必ずコントロールできる病気です。 治療法は日々進歩しています。一人で悩まず、医師とよく相談しながら、あなたに合った治療法を見つけていきましょう。