やまもと皮膚科・漢方クリニック
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役立つ知識

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アトピー性皮膚炎について② 〜なぜ起こる? 日常の対策〜

なぜアトピー性皮膚炎になるの?

アトピー性皮膚炎のはっきりとした原因はまだ完全にはわかっていませんが、「体質的な要因」と「環境的な要因」が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

主な要因は以下の3つです。

1. 皮膚の「バリア機能」の低下
私たちの皮膚は、外部の刺激(乾燥、細菌、アレルゲンなど)から体を守り、内部の水分が逃げないようにする「バリア機能」を持っています。 アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、このバリア機能が生まれつき弱い傾向があります。

• フィラグリンの不足:皮膚のバリア機能に重要な「フィラグリン」というタンパク質が不足していることが多く、これが乾燥肌や刺激に弱い肌の原因となります。

2. 免疫の異常

皮膚のバリアが壊れると、外から侵入した刺激物やアレルゲンに対して免疫システムが過剰に反応しやすくなります。 特に「Th2」というタイプの免疫反応が強くなり、皮膚の炎症やかゆみを引き起こす物質(サイトカイン)が過剰に作られます。

3. かゆみと引っ掻きの悪循環

アトピー性皮膚炎のかゆみは、単なる症状ではなく、病気を悪化させる大きな要因です。
• かゆいところを掻きむしる(引っ掻き) →
• 皮膚のバリアがさらに壊れる →
• 炎症が悪化し、さらにかゆくなる

この悪循環は「イッチ(かゆみ)・スクラッチ(引っ掻き)・サイクル」と呼ばれ、症状を慢性化させます。

治療の3本柱

アトピー性皮膚炎の治療は、以下の3つを組み合わせて行います。 このページでは、特にご自身でできるケア(1と3)について解説します。

1. スキンケア(皮膚のバリア機能を補う)
2. 薬物療法(皮膚の炎症を抑える)
3. 悪化要因の対策(刺激を避ける)

1. スキンケア:うるおいを保ち、守る

治療において最も重要な基本です。薬を塗るのと同じくらい大切です。

入浴・シャワー
目的:皮膚を清潔にし、うるおいを与えます。汗や汚れ、細菌、アレルゲンを洗い流します。
方法:
お湯はぬるま湯(38~40℃)で。
低刺激性の石鹸や洗浄剤をよく泡立てて、手で優しく洗います。ゴシゴシこすらないでください。
洗浄剤はしっかり洗い流します。

保湿剤(エモリエント)
目的:皮膚のバリア機能を補い、水分の蒸発を防ぎます。
いつ塗るか:
入浴・シャワーの直後(できれば5分以内)が最も効果的です。
その他、朝や乾燥を感じた時など、1日に最低2回以上、こまめに塗ります。
選び方:無香料で刺激の少ないもの。軟膏、クリーム、ローションなど様々なタイプがあります。大切なのは、ご自身が「心地よく毎日続けられる」ことです。
塗り方:たっぷりと、皮膚がテカるくらい優しく塗ります。

3. 悪化要因の対策

日常生活で症状を悪化させる要因を減らすことも大切です。

刺激を避ける
• 汗:汗は刺激になるため、かいたらこまめに拭くか、シャワーで流し、その後必ず保湿します。
• 衣類:チクチクするウールや化学繊維を避け、肌触りの良い綿(コットン)素材を選びます。
• その他:洗剤、香水、化学物質などの刺激物、乾燥しすぎた環境、寝不足、ストレスも悪化要因になります。

アレルギーとの関係
アトピー性皮膚炎の患者さんは、他のアレルギーを合併しやすい傾向があります。

• 食物アレルギー:
乳幼児期では、牛乳、卵、小麦などがアトピー性皮膚炎を悪化させることがあります。
しかし、多くの場合、食べ物が皮膚炎の直接の原因ではありません。
自己判断での食事制限は絶対にやめましょう。栄養不足になったり、かえって重いアレルギーを発症するリスクがあります。必ず医師と相談してください。

• 環境アレルゲン(ダニ・花粉など):
ダニ(ハウスダスト)は、アトピー性皮膚炎の悪化要因になることが知られています。
こまめな掃除、寝具の洗濯や掃除機がけが有効な場合があります。
重症の場合、ダニに対するアレルゲン免疫療法が皮膚症状の改善に役立つこともあります。